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心に残った映画や読書の記録。日々の備忘録のようなモノ。【ブログ管理人:小夏】


by 小夏
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「供述によるとペレイラは……」 アントニオ・タブッキ著


c0046869_10582922.jpg舞台はポルトガルのリスボン。
1930年代、ヨーロッパ全体が政治的思想に揺れており、ポルトガルもイタリアやドイツにおけるファシズムの影響を色濃く受けていた時代。
主人公のペレイラは、数年前に妻に先立たれ、最近では肥満による心臓病に悩むごく普通の中年男である。小新聞社の文芸欄コラムを任されているが、報道規制が敷かれた現状では仕事に意義を見出すことも出来ず、かといって積極的に反旗を翻すような気力も体力も持ち合わせていない。唯一の慰めは妻の遺影に向って話しかけるくらいのものである。そんな諦めに似た気持ちで日々を過していたペレイラだったが、助手に雇った反ファシズム思想を掲げる若者モンテイロ・ロッシと出会ったことをきっかけに彼の心に変化が生じてゆく。

このモンテイロ・ロッシという男、コヤツがなかなかどうして曲者なんですね、一見すると。
雇ってもらったのをいいことに、文芸欄コラムとしては使い物にならない政治色豊かな記事を書いて来ては報酬をせびる。読者からすれば、人のいい中年男が金づるとして若者にいいように利用されているようにしか見えんのです。勿論ペレイラだってバカじゃないし、そんなことは百も承知なのでしょう。
にもかかわらず、ペレイラはポケットマネーからズルズルと報酬を支払い続けます。
ペレイラ自身、自分の行動に釈然としないものを感じながらも、ロッシとの繋がりを断ち切ることが出来ないわけですね。

イタリアの作家アントニオ・タブッキ。彼の著書はお初でしたが、とても面白かったです。
タイトルそのまんま全章が“供述によるとペレイラは~”で始まる「供述体」で構成、会話部分も全編かぎ括弧なしだったりして、最初は読みにくそう~とイマイチ腰が引けていたのですが、実際読んでみたら全然OKでした。むしろ「ペレイラに何が起こったか?」がテーマの本書では、「供述体」という適度に突き放した文体がとてもマッチしていたように思うし、ペレイラの不可解な行動の謎と相まって、最後まで緊張感が途切れることなく一気に読了に至りました。爽快な後味感も◎。
新書版で190頁そこそこですし長編に手慣れた方であれば楽勝だと思いますので、書店や図書館などで見かけたら騙されたと思って一度手にとって見て下さい。これはお薦めデス。
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by marienkind | 2009-02-09 12:35 | 書評