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「殺人者の顔」 ヘニング・マンケル著


「警官になったことを後悔したことはあるか?」
「決して。一度も。」



「殺人者の顔」 ヘニング・マンケル著_c0046869_1194459.jpgスウェーデンの警察小説「刑事ヴァランダー」シリーズ第一弾。CSミステリチャンネルやWOWOWでドラマ化されているので、ご存知の方も多いかも。

主人公のヴァランダーは、いわゆる「できる男」ではない。
実直で仕事熱心だが、メンタル的に著しく打たれ弱いタイプのバツイチ男である。
ドラマではケネス・ブラナーが演じており、「実直」は大人の落ち着きに、「メンタル面の弱さ」は母性本能をくすぐる要素となり得たが、原作の本書では、「女々しい」側面が強い。
そのくせ、無駄に溢れる正義感気質が災いし、時に暴走、失態も多い。憎めないが難儀なヤツである。

時代背景がパソコンや携帯電話が普及していない90年代初頭なので、「捜査は足で稼げ」とばかりに地べたを這い回るような捜査が全編を占める。けれど、そこがいい。
過激な描写やハードな展開に慣れ親しんだ読者には一見「地味」に映るかもしれないが、コツコツ地道な捜査を重ねて真相に至る過程が丁寧に描かれた良作だと思う。
10作品中2作品が未翻訳なものの、シリーズとして完結しているのも嬉しい。


内容(「BOOK」データベースより)
雪の予感がする早朝、小さな村から異変を告げる急報が入った。
駆けつけた刑事を待っていたのは、凄惨な光景だった。無惨な傷を負って男は死亡、虫の息だった女も「外国の」と言い残して息をひきとる。地方の片隅で静かに暮らしていた老夫婦を、誰がかくも残虐に殺したのか?イースタ署の面々が必死の捜査を開始する。
by marienkind | 2013-03-21 13:42 | 書評