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男は、なぜ殺されるに至ったのか?


男は、なぜ殺されるに至ったのか?_c0046869_2128251.jpg本日7月24日は、小説家の芥川龍之介が服毒自殺をした日だそうです。享年35歳。
聞くところによると、彼の代表作『河童』から今日の日を「河童忌」と名づけたとのことですが、個人的に、芥川作品で一番好きなのは『藪の中』です。これは文句なしに面白かった!作品自体は彼のオリジナルではなく、『今昔物語』の一篇をアレンジしたものなんですが、古臭さは全くなく、わずか数頁という短さでサックリ読めちゃうのも魅力だと思います。

『藪の中』は一人の「男」の死に関する幾つかの証言を巡って繰り広げられる物語です。
第一発見者、生前の「男」を知る者、容疑者を逮捕した者・・・
これらの者たちから得られる証言により、読者は事件の概要を知ることになりますが、やがて事件の当事者3名(「男」の妻、容疑者、巫女の口を借りて語る死霊=「男」)それぞれの視点から「真相」が語られていくあたりから事態は予想外の方向へ・・・。

――男は、なぜ殺されるに至ったのか?――
男は、なぜ殺されるに至ったのか?_c0046869_211126.jpg
これ、結論を先に言っちゃうと、本書では何ひとつ「謎の答え」は提示されません。ヒントだけは豪快にバラ撒いてくれるくせに、「後は勝手に解明してくれ」と言わんばかりの無責任モード。
いわゆる「未完のパズル」というヤツなんですね。
まあ、要は読み手それぞれの解釈があって然るべき作品ということです。謎解きミステリとしては勿論のこと、人間の本質に迫る心理ドラマとして読んでも面白いんじゃないかな~。
芥川作品の中でも読みやすい一篇だと思いますので、ぜひぜひこの機会に。オススメです。
by marienkind | 2006-07-24 23:11 | 書評