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心に残った映画や読書の記録。日々の備忘録のようなモノ。【ブログ管理人:小夏】


by 小夏
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カテゴリ:書評( 57 )



c0046869_22224115.jpg著者: 安東 みきえ
挿画: 下和田 サチヨ
出版: 理論社


本日は、以前キョンキョンが大絶賛していた本、『頭のうちどころが悪かった熊の話』をご紹介。
表紙に描かれてた熊が何気に不細工だったのと、なんとなくブラック風味のタイトルが印象に残り、「いつか読んでやるぞ!」と思っていたのですが、その後アッサリ忘れておりまして、、、
で、先日、書店の店頭に平積みされていた本書をついに発見。思わず手に取り、その場で(!)読みふけってしまったのであった。
内容は、7つの短編からなる寓話集です。
どれもこれも笑いたっぷり、ついでに毒もたんまりで面白かった~!

【収録作品】
◆頭のうちどころが悪かった熊の話◆いただきます◆ヘビの恩返し
◆ないものねだりのカラス◆池の中の王様◆りっぱな牡鹿◆お客さまはお月さま

静かな余韻を噛み締めつつ最後の頁を捲ったら思わぬドンデン返しが待ち受けていたり、
ブラックユーモアの中に隠されたメッセージに一瞬ホロリとしちゃったり、、、
主役のアニマルたちが、ただただ懸命に、そして貪欲に「生」と向き合う姿は実に感動的で、我が身を振り返り、「人間とはなんと自堕落な生き物よ、、、」などと柄にもなく人生哲学なんかについて、ゆる~く考えさせられちゃったりする、そんな作品群でありました。
特に収録中の『いただきます』においては、実にシュールな展開でありまして、タイトルからして、件の「いただきます論争」等、現代の風潮を痛烈に批判した側面もあるのじゃなかろうかと思うわけですが、それだけに老若男女問わず読んで貰いたい一篇。
なんちって、私自身、本屋で立読み決行しちゃったイケナイ子なのでエラソーなこと言えないんだけどさー。よゐこの皆さんはちゃんと買って読もうね。オススメなのです♪♪
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by marienkind | 2007-10-19 22:23 | 書評

ここ数日、一気に秋らしい気候になりましたね。つーか、めちゃくちゃ寒いんですが、福島。
温度の変化に激弱なワタクシは、案の定、お風邪を召してしまったのでありました。
あまりキレイな話じゃなくて申し訳ないのだけど、鼻水は一向に止まる気配はないし、喉は激しく痛むわ、微熱のせいで頭はボーっとするわ、挙句の果ては太腿にでっかい世界地図!!
ひえぇぇーー!こ、こ、これ蕁麻疹だよ!!蕁麻疹って最初は蚊に指された程度なのに、次第に湿疹の部分がトランスフォーム(笑)して地図みたいな文様に広がっていくの。
この過程がとにかくキモイ。もし良かったらご覧になります?(うそうそ、もう消えた)
そんなわけで、先週末は完全自宅待機で、ほとんどの時間をお布団の中でもぞもぞ過ごしていたわけですが、こーゆー時って何故だか普段より読書をゆっくりまったり楽しめちゃりするから不思議なんですよねぇ、これが。(ダメじゃん、自分)
で、読んだのがこれ。

c0046869_20474290.jpg『臓器農場』
著者:帚木蓬生
出版:新潮文庫




『臓器農場』というタイトルからして非常にわかりやすいというか、そのまんまの内容と言いますか。フツーに勘のいい方であれば、表紙とタイトルだけである程度イメージできちゃうと思うのですが、いや、これマジメに面白いわー。
ページを捲る手が止まんないものだから、「ええい!風邪なんて何処吹く風さっ!」と開き直って、喉ぜいぜい鼻ズビ状態で根性で読み倒した全600ページ超・・・ズビ。

物語は、「臓器移植」をテーマに特別病棟の奥で秘密裏に行われている恐るべき真実を新米看護師の主人公が暴いて行くという一見どこかで聞いたような話ではあるのですが、なかなかどうして、この帚木蓬生(ははきぎ ほうせい)さんという作家、タダモノじゃありません。
御本人が本物の精神科医で医療現場を熟知しているだけあって、描写すべてがひじょーーにリアル。そんじょそこいらのサスペンス作家などとは一味も二味も違う。格が違うのだ。
斬新なストーリーや劇画的なノリで読ませてしまうテクニシャン作家が増える中、「文章」の持つパワーだけで読み手を魅了してしまう優れた書き手は数少ないと思うが、帚木氏がまさにそうであった。(長いこと、積読本でごめんよ。^^;)

単なる「医療ミステリー」の枠を超えて、「いのち」とは、人間の尊厳とは、「生と死」の境界はどこにあるのか、なんてことを風邪っぴき脳内ボンヤリ状態で考えさせられてしまった骨太な一冊。文句なしお薦めしちゃる!の★★★★★満点です。まっ、当然やね。

読了後、氏の他の作品も読みたくなって、「ヒトラーの防具」「逃亡」をAmazonで注文。
こんな時なのよね~、読書の醍醐味を味わう瞬間って。あ~~幸せ
え、風邪? 蕁麻疹? う゛・・・・、それはまあボチボチ。。。(^~^;
(2007年9月2日 読了)
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by marienkind | 2007-09-04 21:07 | 書評

皆さんは迷子になったことってあります? 私はあります。それも度々。(汗)
あ、もちろん子供の頃の話ですよ。場所は迷子の定番「デパート」が多かったかな。
3~4歳頃の子供にとってデパートにお出かけってそれだけで心躍るイベントだったし、当時の自分って、一旦興味の対象に出くわすと後先考えず姿をくらますような大迷惑なオコチャマでしたからねぇ。迷子初体験時こそ、それなりにパニクったものの、懲りずに回数重ねてるうち慣れてきたというか、混乱しながらも「どーすりゃ、この危機的状況から脱出できるんだ?」と冷静に現状分析できるようになってきたというか。
えー結局なにが言いたいかっていうと、ギリギリ極限状態に追い込まれれば、わずか3歳児でもそれなりの自己判断が可能だってことですよ。安易な選択をしているようでも、案外ちゃんと物事の本質は見極めて行動してるってこと。子供は大人が考えてる以上に図太い精神を持った生き物かもしれませんですね。ふふ。

と、やたら長い前置きをウダウダ語ったのは、まさに本書がそんな「迷子」のお話だったから。
とはいえ、こちらは私の迷子エピソードとは比べようもないくらいソーゼツでしたけど。

c0046869_23214836.jpg
著者: スティーヴン・キング
訳者: 池田 真紀子
出版: 新潮文庫



水も食料も尽きた。
スズメバチの猛攻、酷い下痢、真っ黒で巨大な蛇、頭部だけ切り取られた鹿の残骸、
そして、そして・・・、
“得体の知れないアレ、特別のアレ”
おしっこがしたかっただけなのに、
ちょっとだけ森に足を踏み入れただけなのに、
どうしてこんなことになっちゃったの?



さて、本書の舞台となった「森」ですが、これは実在の場所だそうです。
その具体的な大きさは、メイン州北部からニューハンプシャー州、さらにはジョージア州北部に至るほどというから驚異のデカさですね。その中を延べ3200キロの遊歩道が走っているそうで、単純計算すりゃニッポン全土より長いじゃん!って話しなんですが、それはさておき。

読んでいて非常に興味を惹かれたのは、主人公が体験するサバイバルのノウハウについて、実に具体的、実践的な視点で描写されていた点です。まとわりつく「虫」との格闘や「食料」の採取方法など、サバイバルの基本から応用に至るまで事細かく記されているので、「物語」という要素抜きにしてもかなり楽しめるのではないかと思います。アウトドア派の必読本?
とりあえず内容については、まっさらな状態で読んで頂いたほうが断然面白いと思うのでサクッと割愛。基本的に、“少女がひたすら森を彷徨う”という、“ただそれだけ”の直球ストーリーなので非常にわかりやすいですし、キングにしては珍しく軽妙な語り口でとんとん進むので中だるみなく一気に読めてグーです。従来のキングファンにはもちろんのこと、キングはちょっと敬遠気味なのよねぇ、という方にも、かなりとっつきやすい一冊ではないでしょうか。
とはいえ、侮ってかかると相当痛い目見ると思うけどね。
そこはやっぱりほら、モダンホラーの帝王S.キングだし。うひ、うひひひひ。
(2007年6月16日読了)
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by marienkind | 2007-06-20 00:09 | 書評

火の粉


ご近所付き合いあって本当に難しいもんだな、ということを改めて考えさせられてしまった作品でした。マジメな話、今後の人生どれだけ平穏に暮らせるかは、お隣さんにかかっていると言っても過言じゃないです。ヘタな隣人に捕まっちゃったりしたらもう最悪ですからね。
というのは、昔、うちの隣にも居たのですよ、大迷惑なオバチャンが。
パートで働く母の帰宅時間を見計らって押しかけて来ては、毎日毎日飽きもせず他人の悪口を切々訴える人で、まあ、それだけなら何とか我慢も出来たけど、我が家についても他所で有ること無いこと喋りまくられた日にゃ心底ウンザリ。あれには参りました。
今に思えば言動がかなりフツーじゃなかったし、もしかするとあれも病気の一種だったのかもと思えるようになったけど、当時、毎日付き合わされる母のストレスといったら相当なものでしたから、そのオバチャンがある日突然逝ってしまったときは、正直心のどこかでホッとしたような思いもあったり・・・。不謹慎かもしれないけど。
まあ、今や隣人トラブルなんて珍しくもない話ですが、最低限の近隣調査は必要だな、と肝に銘じた出来事ではありましたね。皆さまも、引っ越す際はどうぞ慎重すぎるくらい慎重に。

ということで、ようやく本題の『火の粉』なのだ。

c0046869_1017297.jpg著者: 雫井脩介
出版: 幻冬舎文庫




【あらすじ】
元裁判官・梶間勲の隣家に、二年前に無罪判決を下した男・武内真伍が越してきた。愛嬌ある笑顔、気の利いた贈り物、老人介護の手伝い・・・。武内は溢れんばかりの善意で梶間家の人々の心を掴む。
しかし梶間家の周辺で次々と不可解な事件が起こり・・・。(本書裏表紙より)


読んでいて思わず唸ってしまったのは、女性心理の描き方でした。
「介護」と「子育て」に忙殺される日常を通して描かれる女性特有の「報われない思い」とそこから生まれる「心の隙」。自分も、同性として、人として、そういった葛藤についてもある程度想像することは出来ますが、本書に至っては想像レベルを超えてあまりにリアル。男性作家でありながら、ここまで女性心理のツボを見事に表現出来ちゃうとは全くもって恐るべしです。
ただ、唯一不満を挙げるとすれば、読書中のイラつき度が極めて高い点。
これは、正直許容範囲ギリギリでした。オバカな登場人物のせいで(具体的に誰とは言わんけど)、いつもは温厚な小夏さんが(?)もう少しでブチ切れるところでしたもん。
とはいえ、基本的に読む人を選ばず、どなたでもその世界観にすんなり入り込めるサスペンス物なので文句なしにオススメしちゃいます。↑のブチ切れモードだって、結局のところ白熱して怒り狂っちゃうくらい面白かったということですからね。(あれ?説得力ないッスか?)
(2007年4月21日 読了)
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by marienkind | 2007-04-22 21:33 | 書評

失われた宇宙の旅2001


c0046869_10253418.jpg著者:アーサー・C・クラーク
訳者:伊藤 典夫
出版:ハヤカワ文庫SF



『失われた~』という表題からもわかるように、本書は映画『2001年宇宙の旅』製作過程にて失われたアーサー・C・クラークの構想案をターゲットにしています。要するに、最終的に映画シナリオとしてお払い箱になったネタってヤツですな。
ただ、クラーク氏自らが書き足した注釈などを丁寧に読み込むと、本書に掲載されたストーリーが本来のオリジナル案だったのだろうということが窺われます。ぶっちゃけ、コチラの方が数段面白かったような気がするのも皮肉なことではありますが。

その他内容としては、製作過程における舞台裏エピソードやクラークの製作日記などを収録。
中でも、キューブリック監督とのやりとりを記したクラーク日記は非常に興味深く読むことができます。
  「スタンリー(キューブリック)から“もうひとつの結末”の提案。
  そういえば、昨夜彼の家に、“彼の準備稿”を置き忘れてきたことに気がつく。
  ――無意識の拒絶か?」

の下りでは思わず苦笑い。いまや偉大な偉大なクラーク氏も、奇人変人(?)キューブリック監督を前にかなりご苦労なさったのではないかしら?と思わせるトホホなエピソードのひとつです。

さらに、ボーマンがラストで赤ん坊になる理由HAL-9000やモノリス誕生秘話などの情報がさりげなく提示されている(かもしれない?)のも嬉しいですし、今では手に入れることが難しいと言われているクラークの短編『前哨』(1950年)が収録されている点もオイシイ要素です。
『前哨』は、映画『2001年宇宙の旅』の叩き台となった作品だそうですが、わずか15ページ足らずの本短編の中に、映画のコンセプト全てが詰まっていると言っても過言じゃないです。これはちょっとした驚きでした。
いずれにせよ「2001年マニア」にとっては必読の書ってことになるのかな。
とりあえず映画版or小説版の熱狂的ファンの方であればかなり楽しめるのではないかと。
フツーの映画ファンであってもそこそこ。全く馴染みのない方にとっては・・・・うー。(^~^;
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by marienkind | 2007-01-13 11:00 | 書評

月魚


c0046869_1027337.jpg著者: 三浦 しをん
出版: 角川文庫


私にしては、めずらしく表紙イラストの可愛らしさ“だけ”で買ってしまった本。CDで言うところの、いわゆる「ジャケ買い」ってヤツですな。
彼女の作品については、書店でエッセイを何冊か手に取った程度だったにもかかわらず(すぐさま棚に戻すレベル)、何の根拠もなく“甘っちょろい作風”というイメージを勝手に抱いてた失礼極まりない私だったのですが、甘っちょろいどころか硬質も硬質、私の予想など遥かに超えたへヴィーな内容にガツンとやられてしまったのでした。

【STORY】
かつての幼馴染み、古本屋を営む真志喜と古本の卸を生業とする瀬名垣の2人が、過去に犯した過ちを通して、互いに、そして、自らの心の傷とそれぞれが対峙していく物語。

主人公2人の間にわだかまる葛藤や両者の距離感、微妙な温度差など、読書中、妙なくすぐったさと居心地の悪さを感じてしまう作品でした。そもそもこんな「愁いオーラ」を全身に纏ったような殿方がいるわけないっしょ!、、、のツッコミはさて置き。心の傷を容赦なく抉り出してくる著者の切り口の鮮やかさに時間を忘れて読みふけってしまったのだけど、蓋を開けてみればなんとまあ、行間からじわりじわりと零れ落ちてくる「真実」のさり気なくも過激なことよ。
あくまで“さり気なく”に徹しているところがミソであって、こういうモノは露骨じゃないからこそ無駄に妄想逞しくなるってもの。この点、本書を冷静に眺めれば、かなり個人的趣味に左右される作品であることは間違いないのだろうけど、三浦しをん女史の綴る瑞々しく艶やかな活字マジックゆえか、ゆるりまったりと繰り広げられる本書のめくるめくワールドに心地よく翻弄され、激しく狼狽しつつも胸ときめかせてしまった小夏さんだったのでありました。いやはや、いやはや、、、。
(2006年10月28日読了)

c0046869_10281486.jpg【オマケ】
第135回直木賞受賞作の『まほろ駅前多田便利軒』(三浦しをん著)が一緒に陳列されておりました。こちらは単行本で1600円、さすがに買わずに帰宅したのですが、この本もなかなか良さげでして、ジャケ買いならぬ、挿画買い?したくなってしもた。中に描かれている男たちのイラストが個人的にごっつう好みなのですよ。ええ、見事にツボ。
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by marienkind | 2006-10-29 14:39 | 書評

ってことで、京極堂シリーズ最新作、『邪魅の雫』をゲットしました。わーい♪
本日9/26発売。「邪魅」「じゃみ」と呼ぶそうな。意味は、、、ようわからんとです。(^^;

c0046869_23121734.jpg

しっかし、相変わらず分厚いッスねー。まさに通称レンガ本。
通勤のお供にはちとキツイ約4cm強ってところでしょうか。いや、寝転がって読んでも仰向けで読んでも、この分厚さは結構シンドイものなんだけどね。でも、個人的には4cmなんてぜ~んぜん余裕、寧ろ、物足りないくらいなのであーる。京極堂シリーズは、やっぱり『絡新婦の理』とか『塗仏の宴』くらいのトンデモないボリュームがないとねw

とは云え、久々の京極堂シリーズはやっぱり嬉しい。これは気合入れて読み倒すぞー!
てなわけで、読書に没頭してしばらく音信不通になるかも。ならないかも。(笑)
とりあえず、暫し待たれよ、、、です。
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by marienkind | 2006-09-26 21:49 | 書評

わたしを離さないで


この連休、風邪気味で何をするにもイマイチ億劫なので、一気に積読本を読むことに。
そこでセレクトした一冊が、『わたしを離さないで』。
著者カズオ・イシグロ氏の名前を知らずとも、映画『日の名残り』の原作者、と言えば思い至る方が多いのではないかしら。ちなみに、氏の作品は私も初読みです。


c0046869_9154251.jpg原題: Never Let Me Go
出版: 早川書房
著者: kazuo Ishiguro
翻訳: 土屋 政雄



当時、わたしには秘密の遊びがありました。辺りに誰もいないとき、立ち止まって無人の光景をながめるのです。
とにかく無人でさえあれば、どこをどうながめてもよく、要は、ほんの一瞬でも、別世界にいることを想像したかったのだと思います。(本文より抜粋)



いやはや、すごい小説を読んでしまった。

ロマンチックなタイトルに惹かれて手に取ったが最後、ドロ沼に引き摺り込まれるかのように、延々読み続ける羽目に。とは言っても、読破したのはせいぜい深夜2時頃だから、普通であれば、その後それなりに睡眠時間は確保できるはずなのに、読了後の興奮からか、結局一睡もできず。
本を読んで、これほど気持ちが高ぶったのは、本当に久しぶりのことです。
風邪で安静にすべきなのに、まったく。

主人公のキャシー・Hは11年のキャリアを持つ優秀な介護人。彼女は物語の語り部でもあります。
一人称で綴られる彼女の回想によって、次第に輪郭が見えてくる幾つかのナゾ。
少女時代を過ごした施設での思い出、固い絆で結ばれた親友との関係、施設の教師たちの謎めいた奇妙な言動、そして「マダム」の存在、、、。

決して感情を剥き出しにせず、全ての事実を理路整然と語るキャシーの独白は、心地よく読者をその世界に誘(いざな)ってくれました。でも、その一方、彼女のこの徹底した自己抑制ぶりに、ひどく不気味な感覚を抱いたことももまた事実なのです。だって、彼女の回想を通して語られるその現実は、とてつもなく奇怪なものだったのですから。ああ、なんて恐ろしい、、、。
普段、不眠とはほとんど縁のない私が、目が冴えて眠れなくなっちゃうほどだから、その衝撃度はお察し頂くとしても、だからと言って「感動」という類のモノともちょっと違うのだ。
どちらかというと、行き場のない憤りやら漠然とした嫌悪感、そんな不快な感覚がごちゃ混ぜになってたような気がします。そんな中、唯一救われたのは、静謐な美しさに溢れたカズオ・イシグロ氏の文章です。あれほど残酷で不条理な物語なのに、どこかしら温かい優しさにも満ちている、、、それはやはり、氏の傑出した筆力の賜物なのだと思うわけです。
とはいえ、本書について「好きか嫌いか」と問われれば100歩譲って「苦手」と答えるだろうし、「繰り返し読めるか?」の問いに「YES」と即答できるかどうか、それも正直微妙なところ。
それでも、しつこく心の奥底に居座って、いつまでも私の中でじわじわ燻り続けるのだろうなぁ~と、そんな予感を強く抱かせる一冊ではありました。

本当であれば、もう少し踏み込んで説明したいところですが、本書に限ってそれはベストではなさそうなので、これ以上は語りません。本書には、まっさらな心で向き合ってほしいからですから。
要するに、ウダウダ言わずにとにかく読め!と。
(2006年9月17日読了)
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by marienkind | 2006-09-18 11:25 | 書評

c0046869_2128251.jpg本日7月24日は、小説家の芥川龍之介が服毒自殺をした日だそうです。享年35歳。
聞くところによると、彼の代表作『河童』から今日の日を「河童忌」と名づけたとのことですが、個人的に、芥川作品で一番好きなのは『藪の中』です。これは文句なしに面白かった!作品自体は彼のオリジナルではなく、『今昔物語』の一篇をアレンジしたものなんですが、古臭さは全くなく、わずか数頁という短さでサックリ読めちゃうのも魅力だと思います。

『藪の中』は一人の「男」の死に関する幾つかの証言を巡って繰り広げられる物語です。
第一発見者、生前の「男」を知る者、容疑者を逮捕した者・・・
これらの者たちから得られる証言により、読者は事件の概要を知ることになりますが、やがて事件の当事者3名(「男」の妻、容疑者、巫女の口を借りて語る死霊=「男」)それぞれの視点から「真相」が語られていくあたりから事態は予想外の方向へ・・・。

――男は、なぜ殺されるに至ったのか?――
c0046869_211126.jpg
これ、結論を先に言っちゃうと、本書では何ひとつ「謎の答え」は提示されません。ヒントだけは豪快にバラ撒いてくれるくせに、「後は勝手に解明してくれ」と言わんばかりの無責任モード。
いわゆる「未完のパズル」というヤツなんですね。
まあ、要は読み手それぞれの解釈があって然るべき作品ということです。謎解きミステリとしては勿論のこと、人間の本質に迫る心理ドラマとして読んでも面白いんじゃないかな~。
芥川作品の中でも読みやすい一篇だと思いますので、ぜひぜひこの機会に。オススメです。
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by marienkind | 2006-07-24 23:11 | 書評

ぼくを探しに


c0046869_12595189.jpg原題:THE MISSING PIECE
著者:シェル・シルヴァスタイン
翻訳:倉橋由美子



  何かが足りない
  それでぼくは楽しくない
  足りないかけらを探しに行く
  ころがりながらぼくは歌う
  「ぼくはかけらを探してる、
  足りないかけらを探してる、
  ラッタッタ さあ行くぞ、
  足りないかけらを探しにね」



自分の「足りないカケラ」を探し求めて旅に出た「ぼく」。
旅の途中で彼が見つけた答えとは?

絵も文章もシンプルなので、子供が読んでも楽しめますが、酸いも甘いも噛み分けた大人(笑)が読んでこそ、しみじみとした味わい深さを感じるのではないかしら。下手するとグッときて不覚にも涙ポロリなんてこともありそうです。いえ、あります。(←ワタシです)
この本を読むたび何故か元気が出て、「足りないモノだらけじゃ、文句あるか!」と無駄に太っ腹な気分になる単細胞な自分もどうかと思うが、それはさておき。
人それぞれ、その時々の立場や心境によって、いろんな読み方が出来るナイスな本だと思います。ちょっと心が凹んだときのお供に一冊どーぞ。
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by marienkind | 2006-07-01 13:21 | 書評